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PROJECT 03 航空宇宙領域のデータ活用基盤“i-DIAna”をゼロから開発せよ。

コロナ禍真っ只中の2020年夏。IHIの航空宇宙領域におけるDX推進の機運が急速に高まり、その中で重要な要素となるデータを利活用していくシステム構築のプロジェクトが動き出します。その名も「航空宇宙領域データ活用基盤“i-DIAna”開発プロジェクト」。航空宇宙領域のICTを支えるAS事業部(2023年度より「エアロスペースソリューション事業部」に組織名称変更)と、領域横断で新たなDX手法の開発などを手がけるデジタルソリューション事業部(以下「DS事業部」とする。2023年度より「エアロスペースソリューション事業部」に統合)がタッグを組み、進めていった大規模プロジェクトです。今回は、このプロジェクトで中心的な役割を果たした2つの部署の動きやそれぞれの業務に携わったメンバーの想いなどを紹介しながら、プロジェクトの全容に迫ります。

AS事業部(現エアロスペースソリューション事業部)
デジタルソリューション事業部

01二つの事業部が手を組み、
ゴールを目指すことに。

IHIエスキューブのAS事業部は、日頃からIHIの航空宇宙領域の様々なシステムの開発・運用・保守業務を担当している部署だ。その事業部のF氏のもとに、IHIから「業務の効率化やデータにもとづいた業務遂行のために、新しいデータ活用基盤をゼロからつくってほしい」という要望が届いた。F氏は
「話を聞いてまず思ったのは、データを格納するサーバをどうするかということ。セキュリティ面を考えれば、これまで同様にオンプレミスで構築するのがいい。しかし、データの蓄積を進めていくため、データ保存容量がどれだけ必要か読み切れない点や、スペック面(メモリ等)の拡張性を確保していくためには、クラウドがベスト。ただ、前例がないし、困っていました。」と当時の様子を振り返る。
そして、AS事業部を支援する形で、その後、今回のプロジェクトの牽引役となる「DS事業部」に声がかかる。Y氏は
「私たちに声がかかった時、クラウド型のデータ活用基盤というグランドデザインは決定していました。しかし、それをどう実現するのかがまったく見えていない状態。私にとっても未知の挑戦ではありましが、DXはIHIグループとしても急務だったこともあり、走りながら解決策を考えていくことにしました。」と語る。
Y氏はデータ活用基盤、いわゆるデータウェアハウスの情報収集からスタートした。他社の事例はもとより、世界の知識体系も調べ、どのようなデータ活用基盤であれば、ユーザにとって真に意味のあるものになるか。いち早くその基盤を整えるには、どのような手法で開発すればよいかと自ら問いながら、その形を模索し続けた。

02前例のない挑戦に、
若手も参画。

様々な情報を集めて検討を行なった結果、Y氏はスモールスタートで始め、PDCAを回しながら拡張していくアジャイル方式でのデータ活用基盤の開発を提案することになる。もちろん彼にとっても、IHIエスキューブにとっても新たな挑戦。プロジェクト推進体制についても提案した。
「今回、私自身はICT技術を活用してシステムを開発するという役割ではなく、お客さまの目標達成に向け、お客さまやプロジェクトメンバーなど人と人との協調、合意、一体感を促す役割が主でしたね。」とY氏は語る。
本プロジェクトの取りまとめ役を担ったAS事業部のF氏も
「DS事業部は、新しい技術や新しい進め方を積極的に提案してくれる部署。今回も、同じ技術者として大きな刺激をもらいました。」とDS事業部との協業を振り返った。
そして、その航空宇宙領域のデータ活用基盤は“i-DIAna”と名づけられ、開発がスタート。ここから新たに2名の若手社員がプロジェクトに参画する。一人はF氏のもとで、データを集め、使えるようにする工程を担当したAS事業部のS氏。
「入社時にデータを取り扱うような仕事がしたいと希望していたところ、配属の1年後にいきなり本プロジェクトの話が来て驚きました。データの一貫性の維持と効率的なデータアクセスのために必要な”正規化”の業務は、地道かつスピードを求められる作業でしたが、この工程なしにデータ活用は成功しないという責任感を持って臨みました。」と語る。
そして、もう一人がDS事業部のG氏。彼はS氏が正規化したデータを、お客さまが利用しやすいよう加工する工程を担った。

03プロジェクトを経て
若手が成長、チームが成長。

DS事業部のG氏は、情報工学科の出身。とはいえ、データ分析に必要なデータ加工の業務は初めての挑戦だった。
「最初は、Yさんに聞きながら学び、途中から自分一人で進めていくようになりました。この会社は万一失敗しても、上司や先輩がフォローしてくれるため、思い切って挑戦できる環境があります。今回は特にスピードも求められたため、同期のSさんとともに若手主体でどんどん作業を加速させていきました。」と当時を振り返る。
若手二人の活躍もあり、開発開始から1年くらい経つと、“i-DIAna”には様々なデータが蓄積されるようになっていった。それらのデータを見える化するためのデータ活用基盤のデータ、BIツールを用いた見える化の実現も進み、このシステムにログインするためのライセンスを取得する航空宇宙領域の社員の数も右肩上がりに増えていった。
S氏も「私のところに入ってくる問い合わせの数も、日に日に増えていきました。航空宇宙領域の業務に欠かせないものになっていっている実感がありますね。」と話す。
こうした状況を見守りながら、プロジェクト推進体制も提案したY氏は
「今回、役割分担を明確にしたことで各タスクの深掘りや品質向上につながった一方、チーム間・個人間の情報共有やフォローが希薄になる場面もありました。ただ、そうした場面を乗り越えていくことで、プロジェクトチームとして徐々に強くなっていきましたね。」とメンバーの仕事ぶりや成長を思い出しながら話してくれた。

04基盤構築の先に、
データサイエンティストの道も。

AS事業部のF氏も本プロジェクトをとおして、DS事業部のY氏と同じようなことを感じていた。
「IHIは会社規模が大きいが故に縦割りの組織になってしまいがちだった。そこに対応する私たちIHIエスキューブも然り。しかし、今回のデータ活用基盤は、そもそもの目的がそれぞれに所有していたデータを全員が活用できるものにするというもの。そして、この基盤をつくる私たちもAS事業部とDS事業部の垣根を越え、挑戦することができた取り組みだと思います。」と本プロジェクトの意義を語った。
現在、“i-DIAna”は目標の7割くらいのデータを取り込み終えたところだ。今後の目標について尋ねると、若手二人からも同じような答えが返ってきた。S氏は「私自身がデータ分析まで行なえるデータサイエンティストのような技術者になりたいと考えています。」と話したのに対し、G氏は
「次は、このプロジェクトで作成したデータを使用したデータ分析のプロジェクトに挑戦したい。当社の中にデータサイエンティストのチームをつくるのもいいですね。」と熱く語った。
最後に、このプロジェクトを牽引したY氏にも今後の目標を尋ねると、
「まずは、“i-DIAna”の課題面を解決し、より良いシステムにすること。そのうえで、ここで得た知見をもとに、航空宇宙領域以外にも展開していきたいですね。」と答えた。
若手の成長と上司・先輩の豊富な経験が、IHIグループをさらなる高みへと連れていくに違いない。

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